最近プレイしたゲーム(98):枯山水

 大体一か月ぶりぐらいのボードゲームレビュー。今回は久しぶりの重ゲーとなる「枯山水」。
 ゲームマーケットで話題となった、日本庭園造りという渋すぎるテーマのボードゲームです。


↑ちなみにまだAmazonにも商品がなかったのでボックスアートを。まったくキャッチーさがないw

  • この箱絵はやはりインパクトが強いらしく、ゲームマーケット後もこの箱が各所で話題に上がっていましたw 確かにこの箱は目を引きます。

 さて、このゲームはタイトル通り「枯山水」様式の日本庭園を作庭することをテーマとしたゲーム。各プレイヤーは庭園のもととなる個人ボードを受け取り、その上に庭園を造っていきます。


 まず、各プレイヤーは自分の手番になったら「第一フェイズ」にて、庭タイルを一枚引きます。

↑庭タイルの山。ここから一枚引く。

 引いたタイルはいくつかの使い道があります。まずはボードに「配置」する場合。  

↑ボードに配置。初めは置けるところが決まっている。

 庭タイルは最初はボード左上、または左下にしか配置できず、以後は配置済みの庭タイルに隣接する形で配置してきます。
 この庭タイルには砂紋や苔が描かれていて、この模様の接点を合わせていくのが基本(全部つながっているとボーナス。つながっていない場合、マイナス点になります)。

↑タイルをうまくつなぎ合うように配置しているところ。意外と横方向にはつながります。

  • 庭タイルの砂紋は横方向に流れるように描かれていることが多く、意外と横にはつなげやすいです。ただし縦方向は「渦模様」の接点を合わせづらく、うまくつなぐのはなかなかの配置センスと運が重要になります。

 しかし、いざ配置しようにも、うまくつながらないタイルを引いてしまうこともあります。そんな時は一時的にタイルを「保管」しておくことも出来ます。

↑庭タイル保管中。
 
 庭タイルは一個だけ保管可能で、このタイルは次の庭タイルを引いたときにまとめて配置したり、交換して配置したりできます。
 また、保管のほかに他プレイヤーにいらないタイルを「譲渡」も可能。譲渡することで、このゲームにおけるお金の役割を果たす「徳」を高めることも出来ます。譲り合いこそ禅の精神ということでしょうか。
 保管や譲渡とは別に、必要のないタイルを「廃棄」することも出来ます。廃棄時に徳が下がってしまいますが、庭園タイルを接続できない場合のマイナス点が結構バカにならないので、中盤あたりからたくさんのタイルが破棄されることになります。禅の精神とは何だったのか…w

  • ちなみに徳が0の状況だと廃棄できません。このルールが意外に効いており、後述の「石の獲得」を行うタイミングをうまく見極めなければいけないようになっています。

 そして、庭園タイルを獲得するもう一つの手段が「強奪」です。誰かがタイルを配置しようとしたときに宣言し、そのタイルを奪い取る(奪ったタイルは即時配置する)、という禅の精神どこ行ったw といわんばかりのアクションですが、この強奪は回避不可(強奪を宣言されたら断れない)なので、タイミング次第ではかなり強力なアクションとなります。

  • ゲームデザイン的にはこの「強奪」があるため、強奪されるぐらいなら「譲渡」する、といったように機能するようになっているようです。そのため実際のプレイでは強奪はあんまり起こらず、譲渡で徳を得つつタイルを処分するか破棄するか、といった展開になりやすいです。


 そして上記タイルの獲得が終了したら「第二フェイズ」になります。この第二フェイズにできることは「座禅」「禅僧移動」「石の獲得」「カードの使用」のどれかから選んで行うことができます。

 まず「座禅」は「徳」を1つ上昇させます。前述のとおり徳はこのゲームにおけるお金のようなものですが、最大で6点までしか溜められず、それ以上にはなりません(6点でも座禅アクションは行えます。実質パスですが)

 そして「禅僧移動」。これは最初の庭タイルを配置した際に置いた「禅僧」駒を上下左右の庭タイルのどこかに1歩移動させます。ななめ移動はできず、また庭タイルがないところにも移動できません。

 続いて「石の獲得」。これは「徳」を支払い、庭に配置する庭石を獲得する、というものです。

↑いろいろな庭石。結構リアルな質感。

  • この庭石の小物は結構見た目よく出来ています。一つ一つ同じタイプの石でも形や色が違っているのが面白く、ルール上は特に意味はないのですが庭に置く石の色を揃えたくなりますw

 この庭石は種類によって必要となる「徳」が違い、ボーナス点を得やすい重要な意思ほど必要な徳が高くなっています。しかも、石を獲得するとその時点で徳は0になってしまいます(種類に関わらず、必ず0になります。おつりなし)。

  • 一時的に徳が0になってしまうので次ターンの「廃棄」が不可能になるため、石の購入タイミングは重要。

 そして獲得した庭石は「禅僧コマがある列」に配置します。いない列には基本的には配置できません。

↑禅僧のいる列になら石を配置できる。

  • 例外として、徳が6ある状態で石を獲得した場合、庭の好きな場所に配置できます。

 また、石配置の制約として「石が縦横に隣接するように配置できない」というものがあります。これは庭タイルに「苔」があるタイル(緑色になっている部分)が並んで配置されている場合のみ、隣接して配置できます。

↑苔があるので配置可能。苔タイルが二つ連続して配置していればよく、苔部分が繋がっている必要はない。

 最後のアクションが「作庭家カードの使用」。このゲームではゲーム開始時、「名庭園」と「作庭家」のカードをそれぞれ一枚ずつ受け取ります。

↑最初に貰う二枚のカード「名庭園」と「作庭家」カード。裏面に坊さんが描かれているカードの方です。

 このうち「作庭家」カードはゲーム中一回だけ使用できるカードで、いろいろ強力な効果があります。

↑作庭家カードは歴代の有名な作庭家がそろっている。善阿弥から重森三玲まで年代はバラバラ。

  • これらのカードは状況によっては劇的な効果を発揮するものもあり、一回しか使えないこともあってどこで使うかは結構悩まされます。


 こうしてフェーズ1→フェーズ2の手番を各プレイヤーごとに繰り返し、「誰かが」自分の庭を庭タイルで埋め尽くしたら、そこからは一気に終了に向かいます。この時点で、すべてのプレイヤーはフェーズ1で譲渡、廃棄、強奪ができなくなり、タイルを配置するか保管するかしかできなくなります。そして「全プレイヤー」が庭タイルをすべて配置し終えたら、そこでゲーム終了。得点計算となります。

  • ゲーム終了時の図。上記のような砂紋と石が映える見事な枯山水庭園を築くことができます。

 さて、美しい日本庭園を作庭するというテーマのこのゲーム。美しさを定量化するためなのか、ゲーム終了時の得点手段はかなり豊富になっており、いろいろ多岐にわたります。

  • まず「庭タイル」にまつわる得点として重要なのは「すべての砂紋が繋がっている」かどうか。すべてが繋がっていると7点ボーナスですが、砂紋が切れている部分がある場合、繋がっていない箇所ひとつにつきマイナス2点となります。ほかにも「砂だけで構成されている部分の面積分ボーナス」、「砂紋の渦が完成している場合、構成タイル×2点ボーナス」「苔タイル1枚につき2点」「砂紋が一列左右対称になっている場合5点ボーナス」などの庭ボーナスがあります。
  • そして「庭石」の得点としては「一種類配置している毎に2点」のほか、特定の石の置き方になっている毎にボーナス点が得られます。
    • 石の種類によらない配置ボーナスとしては「石が2×3マスのエリアに桂馬飛びの形に並んでいると5点」、「石が3×3マスのエリアに斜めに並んでいると7点」などがあります。これらのちゅういてんとしては、エリア内に別の石があると成立しない点。これ結構忘れがちで、私も初プレイ時に間違えてボーナスを不意にしました。
    • 石の種類によるボーナスとしては「下段(ボード手前)に「船石」を配置したら3点」「中央縦列に「臥石」を配置したら3点」「上段に「立石(大)」を二つ並べて配置したら10点」「上段に「立石(小)−立石(大)−立石(小)」の順に並べたら15点」などがあります。これらは前述の桂馬飛び、斜め置きボーナスとも重複するので積極的に狙うべきでしょう。
  • そして最後のボーナスとなるのが「名庭園」ボーナス。最初に「作庭家」カードと一緒に受け取った「名庭園」カードには、実在する日本庭園の名前と石組が描かれており、このカード通りに石を配置しているとボーナス点(大体10〜15点ぐらい)が得られます。


↑名庭園。成立しやすい庭園ほど得点が低く、難しいものほど得点が高い。

  • あとは地味ですがゲーム終了時に持っていた「徳」は1つ1点として換算されます。これ結構忘れがち。

 これらのボーナス点を合計し、最も高い得点となったプレイヤーが勝者となります。
 

 さて、ゲームを何度かプレイしてみた感想としては、やはり魅力的なのはそのテーマ。日本庭園というなかなかに渋いテーマでありながら、砂紋や苔が描かれた庭タイルを敷き詰め、そこに石を配置していくのはテーマ性をきっちり反映していて、ちゃんと庭を作っている感が味わえます。ゲーム終了時にはそれっぽくも美しい庭園ができることもあり、ついつい写真を撮りたくなりますw
 ルールそのものも得点システムを覗いてはそこまでややこしいものでもなく、強奪と譲渡というルールのおかげで他プレイヤーとのタイルのやり取りも結構頻繁にあり、ワイワイと庭造りをできる雰囲気もあってソロプレイ感もあんまりありません。
 ゲーム時間もなれれば1時間かからないぐらいで、重ゲーの部類でありながら重すぎないぐらいの良い塩梅です。重ゲー入門的なゲームとしてはちょうどいいぐらいではないでしょうか? 日本庭園に興味を持つきっかけにもなる優秀なゲームデザインだと思います。


 細かく気になる点としては、やはり得点システムのややこしさ。慣れればそこまででもないのですが、慣れるまではなかなか得点システムを意識しながらプレイするのは難しく、この点はプレイヤーごとのリファレンスシートなどが欲しかった気がします。

 また作庭家のカード能力は結構強弱が結構ある気がします。そのものズバリの上位下位互換があるわけではないのですが、状況を選ばず使える能力とそうでない能力があるため、使いやすさという意味で結構有利不利がでる気がします。

  • たとえば「千利休」は「禅僧駒を庭園の任意のタイルに移動させる」、「金森宗和」は「徳を4ポイント得る」という能力だが、「夢窓疎石」の能力は「石を1つ獲得し、任意のタイルに配置する」という、二人の能力を(やや限定的ながら)足したような能力となっていて、他のカードに比べても頭一つぐらい抜けて使いやすい気がします。
  • また特定の状況でないと使えない能力だと「重森三玲」の能力「1ターン強奪されない」などは、さすがに限定的すぎる能力で使いづらいです。このゲームは基本的に強奪されるぐらいなら譲渡する、ということが多く、割とタイルがプレイヤー間で融通されやすいのでそんなに強奪する必要がないんですよね。


 とはいえ、なかなかに面白いテーマのこのゲーム。このコンセプト、コンポーネントのゲームが国産として出てきたのはこれからの日本ボードゲームには良い傾向でしょう。次もこのゲームに続くような日本発ボードゲームが出てくれることを祈りたいです。