最近プレイしたゲーム(13):行商と信頼

 今回のゲームはライトノベル業界きってのボードゲームマニア「土屋つかさ」さん作成の同人ボードゲーム「行商と信頼」です。


↑箱絵が大変クオリティ高し。

 上の写真を見て頂ければ分かりますが、電撃文庫ライトノベル狼と香辛料」をモチーフとしたボードゲームです。
 ライトノベル作家の作者が、他のライトノベル作家の作品をボードゲーム化する、というのもなんだか面白い気がしますw

 
↑左がボード全体。右がボード上部のアップ。コンポーネントは同人とは思えないほどしっかりしている。

 プレイヤーは行商人となり、各都市で商品を仕入れたり、あるいは納品したりしつつ、各所の「信頼」を得ていく事が目的となります。もっとも所持金を得たプレイヤーではなく、もっとも信頼を得たプレイヤーが勝者となるあたりが実に「狼と香辛料」的w

  • 手番が来たらまずサイコロを振り、その目に対応した都市に商品が発生する(カタンのようなイメージ)。その後、プレイヤーはアクションポイント分(最初は2AP)の行動を行う事が出来る。アクションを利用して「街から街へ移動する」(獣道の場合は2AP)、「街に置かれている商品を購入する」(1個1AP)等をこなしていく。商品がある程度溜まったら、街ごとに定められた規定の商品を納品する(コレも1AP)ことで、その街に「信頼マーカー」を置く事が出来る。
    • 商品は最大4つまで持てるのだが、サイコロで6が出たり、誰かが信頼マーカーを置く度に季節が変化し、冬になると商品は2つまでしか持てなくなる。半分以上の街は商品を3つ納めないと信頼マーカーが置けないため、いかにこの期間をやり過ごすかが勝利の鍵となる。
    • 信頼マーカ−は各街に二人まで置く事が出来、それを置くと様々な特殊効果の恩恵を得られる。アクションポイントが増えたり、移動が有利になったり、待ちにいなくとも商品が買えるようになったりなどなど。どの効果を得ていくのかを考えつつ、街を巡っていくこととなる。常に先々を読んで行動するべし。
    • また、キャラクターカードというものもあり、コレを使用する事で有利な状況を作り出す事も可能。1ターンに1枚までは補充されるため、積極的に使っていった方がよいと思われる。
  • 全体的に、原作の雰囲気を大切にしているのがよく分かるゲームデザインになっているのも魅力。例えばポロソンとリュビンハイゲンにいたるルートが「通常ルート」と「獣道ルート」の二通りあるとか(原作の二巻参照)、キャラクターカードは原作に登場した*1キャラクター達となっていたり(全てのカードが違うキャラ)と、原作をうまく二次創作したゲームになっている。ファンにもオススメできるだろう。
  • 特にこのゲームを左右するのがキャラクターカード「ホロ」の存在。これはもっとも信頼マーカーを置いていないプレイヤー(つまり最下位)の手元に置かれ効果を発揮するカードで、持っているだけで「アクションポイント+1」、「冬の間でも商品を4つまで持てる」、「王の勅令の効果を無視する」と、このゲームに置けるプレイヤーの足を引っ張る効果を軒並み無効化する強力なモノ。
    • このカードがあるため、再開のプレイヤーも上位の人間に追いつきやすくなっている。そのため、いかに終盤までに都市の特殊能力やキャラクターカードの能力を有効に機能させ、差をつけていくかがゲームのポイントとなる。

 お金の概念が無く、サイコロで資源が発生すると言う点からカタンらしいゲームかと思ったら、プレイ感覚は全く異なる。むしろ二次創作ゲームとは思えない、戦略とプレイヤー間の駆け引きが要求されるガチっぽいゲームに仕上がっている。
 コンポーネントの出来も良く(パッケージやキャラクターカードのイラストが素晴らしい)、重すぎず軽すぎずのゲームバランスも良くできている。ただ、それ故に少しばかり気になる点もある。

  • 難点と言えるのが、細かいトークン等の視認性が悪い事。特に各プレイヤーの信頼マーカーの色がかなり不味く、緑と青などはもの凄く分かりにくい。色弱の人間がプレイするとまず間違いなく混乱する事になる。この色はもうちょっと何とかならなかったのか・・・。
    • 他にも馬車トークンの色と信頼マーカーの色が微妙に違う、商品トークンの裏面が印刷されていないため、いちいちひっくり返さないといけない(両面にして欲しかった)等。なまじボードを始めコンポーネントの質が良いだけに、ほんの少しの工夫で良くなるのにという部分が結構気になった。
  • 各街に商品を納めた際、信頼マーカーを置く事でその街の特殊能力を使う事が出来るようになるのだが、今自分がどの街の特殊能力を使えるのかが凄く分かりにくい(王の勅令があるとこれまた混乱する)。これ、各街の特殊能力カードとか用意して、信頼マーカーを置いたらそれを貰う、みたいな仕様に出来なかったのだろうか? 上の「信頼マーカー見分け辛い」問題と相まって結構困った。
  • あと、キャラクターカードは原作に登場した人物が美麗なイラスト付きで描かれていて、コレはコレで素晴らしいのだが、ちょっとカードの能力が似たり寄ったりすぎる気がする。全く違うキャラなのに同じ能力というのがかなり多く、大別して「APを増やす」「森もしくは水路を移動」「商品を奪う」の3つに分類されるのがほとんど。ゲームバランス的には仕方ないのかも知れないが、原作キャラの多さの割にバラエティが少ないのがちょっと悲しい。

 プレイ時間もそれほど長くなく、ルールも比較的簡単。それでいて駆け引きや戦略もあり、なにより「狼と香辛料」世界をうまくボードゲームに落とし込んでいる点が素晴らしい。コミックマーケットで3000円という破格値で販売したらしいが、是非気軽に買えるようになって貰いたい(電撃文庫公認にして貰うとか)。

*1:一枚だけ原作キャラではなく「工場長」も混じってたりするw しかもかなり強い。