前回はこちら→http://d.hatena.ne.jp/kaz20001/20120517/1337258625
というわけで、ゲームマーケット春で発売されていた新作・旧作含めた同人ゲームのレビュー続き。
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●ヴォーパルス拡張 〜ヴィシャス〜(I was game)
- 同人ドラフトカードゲームとして、去年の購入以来何度もプレイしてきた傑作「ヴォーパルス」の待望の拡張キット。建物とユニットが追加される。
- 追加建物はなかなかにユニーク。「密輸船」や「後宮」のようなストレートに点数につながる建物もあれば、「供犠台」(配置フェイズ終了時、ユニットの上に経年カウンターを置く)のようなテクニカルなものまで様々。
- 第二版についてきた追加建物「霊廟」「空中庭園」を含めて二種類の追加建物を適用するようになったので、組み合わせ次第でだいぶゲームバランスが変わると思われる。今のところ、新拡張の建物のみ追加でプレイしてみたが、思った以上にバランスはよかった。
↑今回追加された新ユニット。「古きもの」はメリットもデメリットも強烈極まりないw
- ユニットの方も、戦闘に勝つごとに収入が得られる「盗賊団」や算出する資源により様々な効果が得られる「奉納者」、戦力が高く鉱石を生む「宝石獣」などこれまた使い方がいろいろ考えられそうな面白いものが多い。「古きもの」は・・・何かこれ使えたらもう勝ちでいいんじゃないかなw
- 総じて、それなりに遊びの幅を増やしてくれる良拡張だと思う。ちょっと高いが、買って損はないんじゃないかな。
- 袋に入ったチップの数を当てる、ブラフゲームの一種。ルールは単純明快で、はじめ片側の袋に全部のチップが入っている。この状態から「好きなだけ」チップを取り出してもうひとつの袋に移す。で、次のプレイヤーははじめの袋からもうひとつの袋にチップが「半分以上移動しているか」を判断する。半分無いと思ったら素直に袋を受け取り、半分を超えていると思ったらそれを宣言。袋を開けて確認するというもの。
- ユニークなのがチップを数えるための専用トレイの存在。このトレイにチップをぶちまけて、敷き詰めきれない場合は「半分以上」とすぐわかる仕組みになっている。これのおかげでかなりゲームがスピーディに展開するようになっている。これは素直に凄いアイディア。
- チップの数が結構絶妙で、大の大人が本気でつかめば一発で半分移動できるかどうかぐらいになっている。意外とさっくり決着がつくので(トレイの効果もあって)、短い時間で遊ぶにはいいかもしれない。
●オートマティックフロンティア(遊星からのフリーキック)
- もうゲームマーケット恒例となった「遊星からのフリーキック」さんの新作ゲーム。今回のこれはえらい箱がちっちゃいのでぴっくりした。火星開拓をテーマとしたゲームで、オートで動くロボットたちを操り、火星を探索していったり宇宙人と戦ったりして破壊されたりするw
- ターン進行は「開発」「計画」「探査」の3フェイズで進行していく。「開発」フェイズでは場に並べたパーツカードをひとつ購入して手札にする。
- 「計画」フェイズでは手札のパーツから3枚を伏せて出す(プロットする)。「探査」フェイズではプロットしたパーツカードを1枚ずつ開けていきつつ、場に並んだイベントカードをこなしていく。
↑イベントの数々。やたらと宇宙人が多い火星。こいつらをどう捌いていくかがポイントとなる。
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- 基本的に1パーツを開けるごとに1イベント発生なのだが、プレイヤーがプロットしたカードによってはより多くのイベントカードを消化しなくてはならない場合もあるため、ほかプレイヤーの動向も見極めつつプロットしていく必要がある。
- バランスは結構シビアで、一歩間違えると何も出来ないままロボットを破壊される危険さえある。取り敢えず攻略の鍵としては「対話アプリ」ははじめのうちに取っておくこと。というのも、収入が得られるのは「探査/調査」のイベントのみなのだがこれがかなり数が少ないため、「友好的な異星人」で「探査/調査」イベントを発生させることができる「対話アプリ」は生命線になるからだ。これがないと収入的にかなり厳しい。
- あとは「防御」能力が重要。敵対的な異星人の攻撃や砂嵐の両方を防ぐことができるため、これでガチガチに固めてしまえばだいぶ被害を軽減できる。あと砂嵐のダメージはオープンになったパーツの数に依存するので「大型ミサイル」や「シールド」など使ったらなくなるカードで数を調整することも大事。
- どうでもいいが「磁気嵐」と「砂嵐」がごっちゃになりがち。イラストも似てるし。ここはもうちょっとなんとかならなかったのか。
- とことんシビアだが結構面白い。パーツ数がもうちょっと多めで、サプライ組んで遊べるタイプだったらなお良かったかも。
- 見た目がちょっとオシャレなバッティングカードゲーム。死神が街で魂を狩っていくというちとダークなテーマ。
- ゲームは「昼」「夜」の二部構成で展開する。手札のカードをスタートプレイヤーから1枚ずつカードを出していき、同じ数字のカードを出した場合はバッティングとなりカードが墓場行き、それ以外のカードは各街に並べられていく。
- 全員のカードを並べたところで、その時点で各街に並べたカードの合計値が一番高いプレイヤーがその街の効果を得る。昼の場合は命のロウソクを貰い、夜の場合はそれを吹き消す。ロウソクは吹き消さないと得点にならず、消せなかったロウソクはマイナス点になってしまう。順番にカードを出していくので、意図的にバッティングができ、ほかプレイヤーの動きを読みつつカードを出していく必要がある。
- またカードの中には街の効果を得られるプレイヤーが「一番合計の低い」プレイヤーとなるカードや、街カードの場所を入れ替えられるカードなどもあり、これらをめぐる攻防もかなり熱い。
↑ルールブック。これが3枚ある・・・かなりわかりにくいです。
- 残念な点としてルールブックの分かりにくさがある。箱に入れるためだと思われるが、細かく折りたたまれたルールに横向きにページが並んでいる上に、ところどころの記述が複数ページにつながっていたり、必要な情報がどこに書かれているのかわかりにくい構成になっている。正直なところ、このゲームをプレイした時、有志のリプレイ記事を読んだときの方がずっとわかりやすかった。
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- あと気になったのが、得点チップ用として付いてきたマッチ棒。これ本物なんだろうか。だとしたらいろいろやばい気がするんですが・・・。
- ゲームとしては面白いのだが、わかりにくいルールブックがいささか評価を下げてしまう。もうちょっと書き方さえよければ、と惜しい。
●乱世の豪商(乱世の豪商)
- ゲームタイトルとサークル名が同一なのがちとややこしい、エリアマジョリティタイプのボードゲーム。
- 基本ルールは単純明快で、手番になったらカードを出し、そのカードに書かれたエリアに自分の商人コマを置いていく。このときエリアの「線」にかからないように置いていく必要がある。
- このコマはそれぞれ三段階の大きさがあり、各エリアにある「城下町」(まるで囲まれた城)には一番大きいコマしか置けない。当然、この丸のラインにもコマが被ってはいけない。これ重要。
- ラウンド終了時に各エリアに置かれたコマが一番多いプレイヤーから順に得点が入る。ボーナス点はエリア内に置かれたコマが多いほど高いので、なるべくうまいところ競り合いに持って行きたい。
- そして、1ラウンドが終了し、次のラウンドにいくときがこのゲームの真骨頂。なんと、ボード上に置かれたコマはそのままに、下のエリアボードだけを入れ替えるのだ!
- エリアボードが入れ替えられたら、その時点でエリアをはみ出ている、ラインにかかっているコマを全て取り除き、それ以外のコマは置かれた状態のまま次のラウンドが開始される。これを3ラウンド繰り返し、その時点で最も点数の高いプレイヤーが勝者となる。
- 全3ラウンドのエリアボードは最初からすべて見えているので、次のエリアがどのような形だからどのあたりに置けばコマを残せるか、を考えながら布石を打っていくのが勝利のポイント。
- エリアを豪快に入れ替えるルールはかなりのアイディア賞。基本ルールはシンプルなのにこれまでにない斬新なプレイ感覚になっている。今回の新作の中ではかなりの面白さだと思う。
●街コロ(グランディング)
- 「ひつじがいっぴき」のグランディングが同時に発売したもうひとつのボードゲーム。こちらは街を拡張・発展させていくダイスゲームになっている。
- プレイヤーはまず、「麦畑」「パン屋」と建設予定の4軒のランドマークを受け取りスタートする。この4軒のランドマークを完成させたプレイヤーがゲームの勝者となる
- 手番が来たらサイコロを振り、その目に対応した建物の効果を発動させる(収入を得る)。その後、1軒だけ建物を購入(もしくはランドマーク建築)することができる。
- 建物にはそれぞれ特性があり、色でわかりやすく区別されているのが特徴。たとえば、「緑色の建物」は、自分のターンにそのダイス目を出した時にしか効果がない建物。その分、収入は多め。
- 「青の建物」は、自分のターン以外でも、そのダイス目が出た時に収入を得られる(その分、収入が安め)。収入安定のためにもこの建物を序盤にいくつか建てておくと後々楽になるだろう。
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- 収入がやや低めの青の建物の中でも「鉱山」だけは別格で、こいつは異常に収入が高い(値段も高いが)。こいつはなるべく早めに買っておくべきだろう。
- 赤と紫の建物は、それぞれほかプレイヤーから収入を奪ったりする建物。(赤は自分以外のプレイヤーが出した目にも対応。紫は自分が出した目にだけ対応する建物)。その効果はかなり強烈で、ハマるとすごい威力を発揮する。
↑赤と紫の建物。ほかのプレイヤーからお金を奪ったりする攻撃的なカード。
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- 正直なところ、この赤と紫の建物がちょっとネガティブすぎるかな、という気がしないでもない。全員がこれらの建物を買い出すと、時々お金の奪われすぎで一時脱落状態になってしまうプレイヤーが現れる事があるのだ。ダイスゲームゆえある程度の運は仕方ないが。
- 全体的にはシンプルなダイスゲーム。ただ、建物を的確に買っていったプレイヤーがだいたい勝つので、序盤はともかく後半はあんまり運要素で勝てるゲームではない。一度差がついてしまうと意外と逆転が難しいので、そう言う意味では見た目やルールのシンプルさに反して結構ゲーマーゲームなのかも。