最近プレイしたゲーム(61):ウサギとハリネズミ

 本日のボードゲームレビューは、かの伝統のボードゲーム賞である「ドイツ年間ゲーム大賞」第一回の受賞作「ウサギとハリネズミ」。
 ふんわかとしたイラストが美しい、双六風ゲームです。

  • なお、このボードゲーム、旧版(1978年版・ラベンスバーガー)と再販版(2000年版・アバクス社)、さらに再再販版(2008年版・ラベンスバーガー)があるのですが、断然オススメなのが旧版のほう(今回のレビューはコレ)。こちらは田園風景のボードを背景に、ふんわりしたウサギとハリネズミのイラストで、全体的に絵本チックなコンポーネントとなっています。
  • それと比較して再販版のほうはなぜかウサギが擬人化されていて、レースを強調するようにレーサースーツを着ているといういろいろ台無しな感じに(ゲームバランスは良くなっているけど)。ふたたびラベンスバーガー製に戻った再再販版(Amazonでも買えるやつ)は、旧版のコンポーネントの雰囲気に戻っているので、今買うならこれがいいと思う。


↑ボード全景。いかにもヨーロッパの田園風景らしい光景。ピーターラビットみたいです。

 さて、このゲームは基本的には「双六」タイプのゲームで、スタートからいち早くゴールまでたどり着くことが目的です。ですが、仮にもドイツ念願ゲーム大賞の初代受賞作。そう簡単な双六ではありません。

 まずこのゲームではサイコロを使ってコマを進めません。ではどうやって進むのかというと「人参カード」を消費して進みます。

↑人参カード。こいつを消費してコマを進めていく。

  • プレイヤーは手番が来たら、この人参カードを消費することでコマを進めることが出来る。このとき、1マス進む場合は1本で済むが、2マスだと3本、3マスだと6本…というように消費数が指数関数的に増大していきます。
    • ちなみに、この初期人参の数はプレイヤー人数によってけっこう変化します。最大人数の6人だと98本となぜかやたらと中途半端な数だったり。
    • 何本で何マス進めるかはインストカードが付属しているので、計算が苦手な子供でも遊べる点はありがたいです。


↑人参何本で何マス進めるかのインストカード。超便利。


↑ウサギ大行進。ちなみに同じマスには止まれませんので、渋滞すると進むのが大変です。
 こうして人参を消費しながら進んでいき、止まったマス毎に様々な効果が発生します。


↑「人参」マス。見た目通り人参が増えたり、あるいは減ったりします。

  • このマスに止まっている場合、進む代わりに人参を10本貰う、あるいは10本捨てるを選択できます。
    • 10本貰うはともかく、10本捨てるのは意味があるの? と思われるでしょうが、実はこのゲーム「あがり」の際に人参を順位×10本以内まで減らさないとゴールできないという制限があり、前に進むことなく本数を調整できるこのマスは非常に重要だったりします。ゲーム終盤になったところでこのマスの上で延々人参を捨てるプレイヤーはもはやこのゲームの風物詩w


↑「ウサギ」マス。いわゆるイベントマスです。

  • このマスに止まった場合、ウサギカードを1枚引きます。このカードには様々なイベントが描かれていて、人参を10本貰うだとかひとつ前のプレイヤーの1マス前に出る、あるいはひとつ後ろのプレイヤーの1マス後ろに下がる等々が起こります。
    • ステマチックに展開するこのゲームで唯一の運要素ともいえ、いちかばちかの賭けに出る際は狙っていきたいマス。

 
↑「順位」マス。2〜4単体の奴(左)と、1+5+6ひとまとめの奴(右)がある。

  • このマスは止まった状態で自分の手番が来た際、その数字と同じ順位だった場合、順位×10本の人参を補充できます。
    • 手番を使うことなく大量に人参を補充するチャンスなのですが、問題なのは「自分の手番が来たとき」にその順位である必要がある点。そのため、他プレイヤーの動きを見ながら、自分がこのぐらいの順位になれるかどうか、を予想しながら利用していく必要があります。
    • 当然、他プレイヤーが使っている場合はその思惑を崩すべく動くことになります。積極的に邪魔していきましょうw


↑「ハリネズミ」マス。このマスだけ前に進んで止まることが出来ない。

  • このマスは他のマスとは異なり、人参を消費して進んだ際に止まることはできません。手番時に人参を消費する代わりにバックを宣言すると、そのコマがいた位置から一番近いハリネズミマスまで「戻る」ことで止まることができ、その際、戻ったマス数×10本の人参がもらえる。
    • 手っ取り早く人参を手に入れるにはこれが一番なのですが、ルール上ほかのプレイヤーがいるマスには止まれないため、ほかのプレイヤーに先に入られると戻りたくても戻れない、そういう事態になる可能性もありますので油断大敵。


↑「レタス」マス。こいつを巡る攻防がこのゲームの最大の山場。

  • さて、このゲーム最大の曲者がこのレタス。ゲーム開始時に各プレイヤーにはレタスカードが3枚配られるのだが、このカードがあるうちはゴールできないという制限がある。


↑レタスカード。こいつを持っている間はゴールできない。

  • このレタスカードを消費するためには、レタスマスに止まり、手番を一回休む必要がある。ボード上にはこのレタスマスは非常に少なく、そのうえ止まったプレイヤーが一回休むものだからなかなかマスが空かず、止まるタイミングが非常にはかりづらい。
    • なお、レタス消費時にはプレイヤー順位×10本の人参がもらえる。そのため、あまり後半のレタスマスに止まると人参が消費しきれない、という事態に陥ることもある点も厄介。

 こうしてコマを進めていきながら、ゴール条件を満たしつつ早くゴールにたどり着くことが目的となります(一応全員ゴールするまでプレイします)。

  • 実際にプレイしてみると、ほのぼのしたボードの風景からは想像もつかない、読みあい、化かし合いの駆け引きが繰り広げられる熱いゲームです。特に「レタス」の消費を巡るじりじりとした攻防や、人参の回収あるいは破棄を巡る争いはかなり深いです。これドイツだと子供向けゲームらしいですが、これで遊ぶドイツの子供の将来が不安になりますw
    • レタスはボード上にマスが少なく、どこでレタスを消費するかが勝敗を分けるポイントです。後のほうまでレタスを残してしまうと、消耗するのに一苦労です。基本的には早め早めに消耗するようにしたほうが良いです。
    • 人参も、ゴールまでに消耗しないといけませんが、道中では逆にある程度まとまった数がないと移動に不自由しますし、人参が足りないためどこにも進めない場合はスタートからやり直し(人参は初期値に戻る)という厳しい掟があります。どうやって人参を調整していくかが腕の見せ所。

 運と実力の要素が適度にまじりあった深いゲーム性はまさしくドイツゲームの「元祖」といってもいい傑作ゲームです。発売から30年は立ちますが、ラベンスバーガーの新版はまだ普通に買えるというロングセラーっぷりも納得の一品。