最近プレイしたゲーム(52):祈り、働け

 今回のボードゲームレビューは、たぶんこれまで紹介した中では随一のプレイ時間とコンポーネント量を誇る「祈り、働け」。

「祈り、働け」日本語版

「祈り、働け」日本語版

 中世ヨーロッパの修道院を経営し、周りに村を築き上げたり、修道院を広くしていくことを目的としたゲーム。
 作者が「アグリコラ」や「ル・アーブル」でおなじみのウヴェ・ローゼンベルクだけあって、ゲームシステム的にはこの二つをおいしいどこ取りしたような内容になっている。

  • アグリコラ」や「ル・アーブル」と同じように、このゲームにもショートゲームルールがある。今回のレビューはこのショートゲーム版のルールでのレビューとなります。あらかじめご了承ください。

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  • まずゲーム開始前に「フランスステージ」か「アイルランドステージ」のどちらでプレイするかを決める。これによってゲーム中に使用するチットや建物が異なる。
  • 各プレイヤーにセンターボードを配ります。このセンターボードには最初は3つの建物と、3か所の森、2か所の泥地カードが置かれている状態から始まり、この他に初期資源と、4枚の基本村カードを受け取ります。


↑プレイヤーのセンターボード。ボード右下の建物が「修道院本館」。

  • 各プレイヤーのターンにできることは大きく分けて「建物の能力を使う」「ボードに置かれた木を切る/泥炭を掘る」「建物を建設する」の3つがあり、これらのアクションを1ラウンドごとにどれか1つ、手番プレイヤーは全プレイヤーの手番終了時にもう1つ行うことが出来ます。
  • 「建物の能力を使う」場合は、自分のボード上の建物に「牧師」コマを置くことでその建物の能力を使うことが出来る。


↑建物カードにコマを置いて能力を使用する。

    • すでにコマが置かれている建物は使用できない(コマを置けない)。また、牧師コマは3つあるのだがこれらのコマを使い切る(=すべて建物の上に置く)までは手元に戻ってこない。
    • また、他人のボード上にある建物を使うこともできる。ただしこの場合、その建物の持ち主であるプレイヤーに使用料を払い、「そのプレイヤーの」牧師コマを置いてもらって使用することになる。
      • 建物の使用依頼は断れない。これをうまく使って使われたくない建物をふさいだうえでコマを減らす、といったプレイも可能。ただ、当然だがその時点で相手プレイヤーにコマがない場合は建物を使えない。
  • 「ボードに置かれた木を切る/泥炭を掘る」アクションは、ボードに配置された森、泥地カードを取り除いて木やピート(泥炭)の資源チットを獲得する。
    • これを行っていかないといつまでたってもボードが開かず、建物を建築できる場所が少ないままとなってしまう。なるべく序盤はボードを開ける意味でも積極的に行いたいアクション。
    • このアクションや、資源チットを獲得する建物を使用した場合、どれだけ資源が算出できるかは↓のリングボードで示される。

 
↑現在のターンとそれぞれの資源が算出される量を表すリングボード。

    • このリングボードの目盛は毎ラウンドごとに一つずつ進み、その時点で各資源コマの位置の目盛分、資源が算出される。たとえば上の写真だとすべての資源が「2」個算出できることになる。
    • 各資源を算出した場合、その資源コマをリングボードの「0」の位置に移動させる。これにより一度とった資源が一時的に獲得できなくなる(ラウンド経過でまた獲得できるようになる)
      • アグリコラやル・アーブルで非常に面倒だった資源をボードに置く手間がこれによりなくなっている。非常にありがたく分かりやすいシステムw


↑ル・アーブルでもおなじみの裏返してほかの資源に代わるチット。アイコンの書き方とかも似てる。

    • 資源チットは、ル・アーブルでおなじみ両面方式で別々の資源が書かれている。これらをひっくり返すことで燃料、食料効率が上がったり、得点が付くようになったりする。
  • 「建物を建てる」アクションは資源を支払って建物カードをボード上に配置する。


↑建物カード。ターンが進むごとに建てられる建物は増える。

    • ターンが経過するごとに建てられる建物カードは増えていく。また、建物によっては建てられる場所が決まっていたりする。特に修道院は、最初からボードにある「修道院本館」につながるようにしか建てることが出来ないため、建設には頭を悩ませる。


修道院本館(右)につなげるように修道院系の建物(左)を建設していく。

  • また、一定ターンごとに「村フェイズ」が発生し、このタイミングでは村カードを建設することが出来る。村カードは隣接する建物によってボーナス点が入る建物で、このボーナス点が大きく勝敗を分ける。よって、建物を建てる際はこの村カードの配置も頭に入れておかないといけない。


↑村カード。ゲーム終了時にボーナス点が入る。

  • そのほか、手番を使わない特殊なアクションとして土地ボードの拡張がある。
    • 土地ボードの拡張はお金を払って新しい土地ボードを購入し、センターボードにくっつけていく。この土地ボードは平地、山地、海岸などの種類があり、最初は安価だがだんだんと値段が高くなっていく。いつこの土地ボードを購入して拡張に乗り出すかがこのゲームのキモとなる。


↑赤い枠内が最初のセンターボード。そこに追加の土地ボードや山地ボード、海岸ボードなどをくっつけて土地を広げていく。

↑こちらがゲーム最終形。かなりのサイズに広がっている。


 これらのアクションを行っていき、全プレイヤー+スタートプレイヤーの追加アクションを行ったらラウンド終了。リングボードの目盛を一つすすめ、このリングが一周したところでゲーム終了(通常ゲームだと二週)となり、その時点で最も得点を稼いでいたプレイヤーの勝利となる。

 このゲームでの主な得点の稼ぎ方はだいたい以下のような感じとなる。

  1. 建設した建物カードの点数
  2. 村カードのボーナス点
  3. 各種チット類についたボーナス点
  • この中で一番大きな得点源となったのが「村カードのボーナス」。プレイヤーの建設状況にもよるが大体50〜100点前後になった。最終的な得点が120〜150点ぐらいになったのでかなり大きい。ただ村カード自身には得点以外の能力がないことと、周りの建物の点数に依存するため、うまくほかの建物も並行して建設していかないといけない。
  • チット類のボーナスは場合にもよるが、特にひとつで「30点」もはいる「奇跡」チットが大きい。かなり条件が厳しいが狙う価値あり。ほかにも細かく稼げる点がおいしく、1ラウンドごとに10〜20点前後稼げることもある。今回のプレイではやらなかったが、こちらを中心に稼ぐ方法も面白そう。

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 さて、ゲーム感想なのだがアグリコラやル・アーブルどちらにも似ていてどちらとも違う不思議なゲームプレイ感覚。かなり場の状況が複雑になるのだが、1手番ごとにやれることがシンプルでわかりやすく、ダウンタイムを思ったほど感じなかった(短いわけじゃないけど、常に考えることが多いので気にならない)。
 今回は初めてのゲームだったのでショートゲームだというのに2時間かかってしまったが、その面白さに引っ張られたのか不思議とだれることがなく最後までプレイできました。

  • 常にプレイヤー間で飛び交った言葉が「手番足りない」「資源足りない」。建物を建てるには森を切り開かなければならない、だがほかの資源も取らないといけない、せっかく建てた建物を使いたいがコマを置く暇がない…と、常に手番はカツカツだった印象。中世の修道院経営の厳しさがしのばれますw
  • 情報量がかなり多いゲームですが、カード類は割とすっきりとアイコンなどでまとまっていて見やすく、サイズも小さいのでアグリコラの時ほど場所も取りませんw サマリーボードもついてくるので、そのあたりはわりと見通し良いかな。 
  • 難点はやはりチット類やカードなどの多さから、準備や後片付けなどがけっこう煩雑なこと。こればっかりは仕方ない。
    • 100円均一などで小物タッパーをいくつか買ってきて、個別管理すると遊びやすい。お試しあれ。

 
↑タッパーでチットを小分けにする。しまいやすく、そのまま取り出して入れ物としても使える。

  • あと、ホビージャパンクオリティというか、マニュアルが変…というか読みづらい。というのもなぜかマニュアルが「ゲーム準備」「ルール説明用」「詳細ルール」「付録」と4冊に分割されていること。普通に1冊でいいのに分冊されているせいか、特定のルールを探すにはどこを見ればいいのか迷ったり、なぜかおかしなところに重要ルールが記載されていたりで大変読みにくい。
    • 一度わかってしまえはそこまで複雑なルールではないのでプレイしやすいのだが、いざ始めるまでが妙にハードルが高くなっている。
    • ホビージャパン翻訳にありがちなルールミスはなさそうだが、すごく気になったのがアクションマーカーが「牧師」コマである事。舞台が中世で、タイトルが「祈り、働け」なんだからテーマ的には多分ベネディクト会系の修道院なんだろうけど、これだとカトリック教会だから「神父」じゃないのか…。

 とはいえ、ゲーマーゲームとしては久々にのめりこめそうな面白いゲーム。今回はショートゲームでプレイしたが、次はよりハードルが高くなる通常ルールでのプレイもやってみたい。
 「アグリコラ」「ル・アーブル」好きにもお勧めできます。