最近プレイしたゲーム(46):謀略級三国志

 本日のゲームレビューは、ボードSLG専門誌「ゲームジャーナル」に収録されていた「謀略級三国志」。

ゲームジャーナル25号 謀略級三国志

ゲームジャーナル25号 謀略級三国志

↑謀略級三国志が収録されていたゲームジャーナル25号。


三国時代の中華を舞台に、謀略の限りを尽くします。

 三国志がテーマのゲームですが、面白いのがプレイヤーは自分の正体を隠しつつ、各勢力を軍師として渡り歩いて目的を達成していくという、結構独特のシステムになっています。

 ゲーム開始前にプレイヤーは「軍師カード」を1枚引きます。これでプレイヤーが担当する「軍師」を決定するのですが、この情報は基本非公開。
 軍師によって能力や勝利条件が異なり(大概が得点ですが)、プレイヤーはこの軍師カードに書かれた勝利条件を各々目指していくことになります。

↑これが軍師カード。各プレイヤーが1枚担当する。

  • 基本的には三国志的に主要な軍師がそろっていますが、なぜか華佗だの左慈だのといったやつもこっそりまぎれてたり…。あんたら軍師でもなんでもないだろw
  • 軍師カードは結構な枚数がありますが、基本的に「能力が強い」ほど「勝利条件が厳しい」ものとなっています。諸葛亮とかその典型で、能力はかなり強いのですが勝利条件が結構厳しいです。上記の「田豊」あたりだと、能力と勝利条件のバランスがちょうどいいぐらいでした。


↑各勢力の人材ストック。ボード上に決められたコマを置いたのち、余った駒はここに置いておく。
 勢力は、魏、呉、蜀の三国のほかにも袁紹袁術劉表劉璋呂布西涼馬騰)、独立勢力などが存在しており、それぞれ初期配置以外のコマは盤外のストックに置かれます。どの勢力もこのコマ数以上の領土拡大はできないので、コマ数=国力と判断していいです。

  • 単純なコマ数だと魏が一番多いのですが、場合によっては司馬懿が魏の内部から晋を立ち上げることもある。武力とコマ数のバランスだと、やはり蜀あたりが使いやすい…がこちらはまわりを有力勢力に囲まれていて、範囲を伸ばしづらいのがつらいところ。
  • 三国以外だと呂布勢力がかなり荒らしやすい面白い勢力。肝心の呂布が武力4ととびぬけて強く(次点で関羽張飛太史慈などの3)、ほかにも張遼や高順など、強力な武力をもった武将も控えている。反面、文官の割合がかなり少なく、武力+1効果を持っている文官が陳宮しかいないため、ダイス運次第ではさっくり負けてしまうこともあり。
  • 個人的には西涼馬騰軍が使いやすかった。コマ数も少なめで武力の強い武将も少ないのですが、周りが空白地だらけで一気に短期決戦的に勢力拡大化可能、なので一発逆転が狙えます。

 
↑中原あたりの激戦っぷりとは裏腹な、西涼の過疎っぷり。まぁ大体演義通りなんですが。

 各プレイヤーははじめ「説客」という状態でボード上に配置されるのですが、この状態でできることはボード上の移動(隣の領地へ移動する方法と、大陸のどこかにワープする方法の二通り)のほか、現在いる領土を支配している勢力に「仕官」することができます。

  • この仕官ですが、別に一勢力に一プレイヤーという制約はないため、時に一勢力に何人ものプレイヤーが集う場合があります。

 仕官した場合は、手番中にその勢力のコマをストックから補充して配置したり、隣国に戦争を仕掛けて領土を拡大したりと、その勢力の行動を行うようになります。

  • 軍師の能力によっては、補充コマを通常より一度に多く配置することが出来たり、勢力拡大時に通常移動できない道を移動することが出来たり、戦争判定で有利になったりします。
    • が、そうやって軍師の能力を宣言していると、どの軍師を担当しているのかバレてしまうため、使い過ぎないようにステルスすることもある程度必要です。

 仕官したのちも、自由に説客に戻ることが出来、また別の勢力に仕官するなども自由自在です。このため、わざと本命以外の勢力に仕官→戦力を消耗させたのち説客に戻る→本命に仕官、といった戦略も考えられます。

  • このため、マップ上の勢力の状況と各プレイヤーの勝利までの状況が一致しないことも往々にして起こります。誰がどの軍師を担当しているのかを早めに見極めるのが勝利のポイントです。

 
 基本的には使えている勢力の領土=1点となり(重要な土地は2点)、4人プレイ時には19点を獲得したプレイヤーの勝利となります。
 勢力コマの限界からみて、結構この点数は厳しい(領土支配には最低1コマを配置しなくてはならず、三国以外の勢力だと、駒が20個ない)ように見えますが、軍師の能力によっては特定勢力の点数×2などの補正があるため案外さっくり決まりやすく、大体1〜2時間で収束します(意外と収束性は良いです)。
 この軍師システムが三国志の世界観的にもぴったりマッチしていて、勢力を拡大するシミュレーションゲーム的な面白さと、プレイヤー同士の水面下の駆け引きをうまく兼ね備えた良システムとなっています。

 ゲームの問題点としては、ある意味当たり前ですが「三国志を知らないと何が何だか」という点…まぁ、これはもともとSLG専門誌についていたゲームだし、三国志を知らない人間がプレイすることを前提としていないんでしょう。ただ、プレイ前に三国志を知っているかどうかは確認したほうがいいかと。
 後気になったところは「このゲームの時代設定がよく分からない」点。董卓がいないのでそれ以降の時代だと思われ、郭嘉太史慈がいるので赤壁の戦い前ぐらい*1にも見えますが、孫堅が健在の上で袁術が別勢力になっていたり、晋が成立したりと、ぶっちゃけ時代がいつなのかはよくわかりません(一応ゲームルール上、孫堅は途中で亡くなりますが)。まぁ、気にしたら負けなのでしょうけど。

  • 一応193年以降という設定らしいのですが、それだと孫堅はもう亡くなっている(191年没)わけで、やっぱり細かいことは気にしないほうが良さそうです。

 後は、数多くの武将たちがコマとして登場するわけですが、やはりいまいちよく分からない人選や、能力値に対する不満などもあるわけで、気になる人は気になるかもしれません。

  • 個人的には、蜀勢力の「関氏」(関羽の娘)とかはなんでいるのかよく分かりません(武力0なので基本全く役に立ちません)し、どうせ出すなら演義に沿って「関銀屏」として登場しても良かったんでは…。

 とはいえ、SLGタイプのボードゲームとしてはルールがそれほど複雑でもなく、結構とっつきやすく出来ています。三国志が知らないとつらいと書きましたが、逆に三国志が好きな人であればたまらないゲームではないでしょうか?

*1:太史慈演義だと赤壁後まで生きていますが、史実だと赤壁前に亡くなっています。