映画「ミッドサマー」を観てきた

 6月に入って、やっと映画館が一部解放され始めたため、映画「ミッドサマー」を観てきました。

いやぁ、2月ぐらいにこの映画見に行こうと思っていたら、緊急事態宣言が出てしまい、結局4月も延び延びになってしまいました。

 映画館も解放されたとはいえ、4席に1席ぐらいしか解放されていなくて、これ運営費の方が高いんじゃないかってぐらい厳戒態勢の営業でした。

  • せっかくなので少しでも売り上げに貢献すべく、「ミッドサマー」のパンフレットも買ってきた。

 

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 この爽やかな光景がまさかあんな地獄絵図になるとは…w

 

 というわけで映画の感想などを。この映画、その内容的に感想を書くとオチに触れないわけにはいかんので、ネタバレも含みます。

 

 まず初見の感想としては「スゲェ『ウィッカーマン』みたいな映画だな」です。

 「ミッドサマー」はいわゆる地方伝承を扱った「フォークロア型ホラー」映画に当たる作品で、スゥエーデンの小さな共同体に訪れた主人公たちが、そこで行われる「夏至祭」の儀式に参加する。だが、その儀式には隠された意味があり…といった感じの内容。

 隔離されたカルト的な共同体、夏至祭、性的な儀式、最終的なオチに至るまで、『ウィッカーマン』(1973年版)のオマージュと思わしき描写がそこかしこに見られます。

 なので『ウィッカーマン』がダメな人は完全にダメな奴で、逆に『ウィッカーマン』が気に入ったという人はこいつも気に入るんじゃないでしょうか(まぁ、その『ウィッカーマン』を見たことがある人がどれだけいるのかってレベルですけどw)。

 

 ストーリーラインはとにかく丁寧にできており、先に出てきたシーンがきっちり後のシーンの伏線となるように計算されつくしています。

  • 舞台となる共同体の爽やかな明るさと、その裏に隠された陰惨な習慣。序盤に登場するタペストリーは物語のその後の展開を暗示し、村の習慣などは序盤にちらっと画面に映った「檻に入った熊」は最後のシーンに印象的に再登場する等々。
  • 特に姥捨崖から身を投げた老人たちの痛みを共感するように「一緒に泣いていた村人たち」が、後に主人公が大きなショックを受けたとき、「一緒に泣きだす」ところは意味が分かるとぞっとするシーンでした。

 たちが悪いのが、この話一応はホラーという体なのに、主人公のダニー視点だと大筋では「ハッピーエンド」と言えなくもない点w

 家族を失い、恋人からも面倒がられて扱いが悪く、孤独を感じながらも周りの意見に流されてしまう弱さを持っていたダニーが、遠い異国の地の儀式に参加し、共同体から家族として迎えられ、その心が修復されるという「再生の物語」という筋書きは、そこだけ見るとホラーとは思えない。まぁ、その過程で恋人含めて友人全滅しているわけなんですがw 

 

 

 ホラーとしては、仲間たちが一人、また一人と殺されていく過程で、もうぐちゃぐちゃな死体となって写されるシーンなどが挟まりますが、クソ明るい村の中で大写しになるせいか、逆にもうやり過ぎていて一種のギャグみたいな感じになっちゃっていますw

 むしろ、主人公が徹底的に精神的に追い詰められていく過程の方がずっとホラーで、特に最後のシーンでダニーが見せた「別れのほほ笑み」が間違いなくこの映画で一番怖いよ。

  • あそこはいろいろと解釈が分かれるシーンだと思いますが、ダニーが最後に犠牲者を選んでしまったことにより、それまでの孤独に生きてきた自分も含めた人間関係が)「壊れて生まれ変わったこと」こと、それにより自分の居場所を得たことによる「喜び」がダニーにあったということなんでしょうか。なんというかこれは「癒し」といっていいのか…。

 

 とりあえずこの映画に言えることは「これはカップルで見に行く映画ではない」ということでしょうかw ホラーだけどスプラッタなシーンは抑えめ。だけど一人の人間が壊れていく鬱表現はっ本当に巧みで、かなり精神を蝕むタイプの映画です。スゴイけどきつい内容でもあるので、むしろ良くこれバズったもんだなw

  • この映画の最大の欠点は「長い」こと。上記の通り伏線や暗示がそこかしこに散りばめられ、巧みにつないではいるもののさすがに140分(約2時間半)は長いw それこそ100分ぐらいに纏まらなかったものかという気がしますね。実際にはディレクターズカット版だとさらに長くて170分もあるらしいし…。