最近プレイしたゲーム(53):ヒベルニア

ヒベルニア(HIBERNIA)

ヒベルニア(HIBERNIA)

 今回のボードゲームレビューは、これまで聞いたことのないボードゲームメーカー「クローゼット・ナード」から出版された陣取りゲーム「ヒベルニア」。
 作者は「エリック・ヴォゲル」。このゲームはそのエリックさんが自費出版していたゲームを製品化したものらしい。なぜか、同じ作者の「カンブリア」とともにまとめて日本語版が出たのですが、いったい何があったのでしょうかホビージャパン


↑自分の兵士コマをヒベルニア各地に派遣し、覇権を競う。
 カラフルに色分けされたヒベルニア(アイルランド)の地図に、自分の兵士コマを配置していく陣取りタイプのゲーム。
 
 プレイヤーは手番の最初にサイコロを振り、出た色の陣地+任意の色の陣地の二回分侵略することができる。

  • 地図上の領地は全4色で色分けされており、各色5個ずつの領地が存在する。

 侵略時には自分の手元にある兵士コマを地図上に配置していくのだが、この時領地に派遣できる兵士コマの数は「その領地に隣接した自分が支配している領地の数」となる。

  • 兵士コマの数はかならず最大値派遣しなければならない。手元に兵士コマが足りない場合は、自分の支配地上のコマを動かして配置する必要がある。
  • このとき、他プレイヤーの兵士コマが置かれている領地に配置しようとした場合、自分が置くコマと、すでに置かれているコマを相殺する。どちらも同数ならばその領地は空白地となる。相殺したコマはボード上のケルト紋様のマークの上に置いておく。


↑死亡した兵士はケルト紋様の上に置く。きっとここがヴァルハラなんでしょう。

 また、侵略一回分のかわりに、自分が支配しているサイコロの色の領地へと兵士を追加で動員したり、コマを補充することもできる。

  • 自分の領地へ兵士を動員する場合、動員できる数は、侵略時と同じく隣接している自分の支配地の数となる。なお、動員の場合は手元に兵士コマがないといけない(ボード上のコマを再編成できない)。
  • コマを補充する場合、ケルト紋様の上に置かれた自分の兵士コマをすべて手元に戻すことが出来る。ただしその際、ほかのプレイヤーのコマも半分だけ戻ってくるので、再編成のタイミングは考えなければならない。

 
 自分の手番が終わったら、得点計算となる。この得点計算と勝利条件の特殊さがこのゲームのキモである。

  • 得点計算は「自分の領地の支配している色」分だけ、ボード周りの得点トラックを進めていく。得点トラックも色分けされていて、それぞれのマスの色に対応した色の領地を支配していれば、先へと進めることが出来る。


↑ボードの周りが得点トラック。後半はかなり色の制限が厳しい。

    • サイコロで「白」の目が出た場合、侵略1回の代わりにこの得点トラックの任意の色を持っている扱いで進めることが出来る。
    • 前半はいいが後半はこの色の制限が厳しくなっていき、なかなか先へ進めないことも多い。お互いの領地に責め合う展開になることもあって、意外と差が付きにくく接戦になりやすい。

 誰かが得点トラックを1週したらそのラウンドで終了。一番得点トラックを先に進んだプレイヤーが勝者となる。

 基本ルールは割とシンプルながら、侵略時の特殊ルールである「相手の陣地を壊滅させることはできない」ことと「他プレイヤーの領地が飛び地になるように侵略することはできない」ルールが意外に効いていて、あえて防衛せずに戦線を伸ばし続ける戦法(途中の領地をカットできないようにする)や、相手の領地をうまく孤立させないように侵略したりする必要が生まれます。
 戦略性が高い割に侵略の矛先はサイコロ任せだったりと適度に運要素もあって、領地の取り方次第では一発逆転も可能。

  • しかし、なぜ彼らはサイコロで侵略先を決めているのでしょうか? ケルト占いとか?

 プレイ時間も短め(30分ぐらい)で収束性が高いのでさっくりプレイできる、なかなかに佳作の陣取りゲーム。箱が小さめで値段が安い(3000円以下)ことも良い。

 
 欠点として、とにかくマニュアルが分かりにくい事。元々の原文ルールがかなりわかりにくいうえ、ホビージャパンが重要ルールを誤記していたりとややこしさに拍車がかかるデキで、ルールブックよりもレビューサイトの説明のほうが分かりやすいという始末。せっかくゲームそのものは面白いのに、肝心のマニュアルがやる気を削いでくれます。

  • 初めてのプレイの際は、ゲーム自体は30分で終わったのに、ルール確認でそれ以上の時間がかかってしまった。本当に直観的ではないマニュアルでわかりにくいです。
  • なお重要な誤記とは最初の準備時、3番手のプレイヤーがコマをケルト紋様に置く数はマニュアルでは3個となっていますが、実際は1個。

 まったく見知らぬメーカーの、知らない作家のゲームでありながら、思った以上に面白いゲーム。同作者の「カンブリア」のほうがどんなゲームなのかも気になります。どっかでプレイできないかな?