ティルズオブ ファンタジアのダオスについての私的な見解

■筆者注■

  • この考察はあくまでもゲーム本編の描写のみによる見解です。小説版やOVAを含む別メディアでの描写は考察対象としていません。ご了承ください。
  • この考察にはネタバレが含まれます。ティルズオブファンタジア(以下TOP)、およびティルズオブヴェスペリア(以下TOV)のネタバレをしたくないという方は一度クリアしてからのほうが好ましいです。

 TOPにおけるラスボス「ダオス」は、よく悲劇的なラスボスを挙げる際に名を連ねることが多い。
 事実、彼の行動は自分の母星を救うための行動であり、それを果たせぬままに主人公(クレス達)に倒されたのだから、彼自身から見た場合はその結果は悲劇でしかない。 
 だが、私は常々この考え方に少々疑問を持っていた。
 というのも、ダオスはどう考えても、紛れも無く、クレス達の世界に対する「侵略者」であり、その目的は「資源の略奪」に他ならないからだ。
 自らの母星である「デリス・カーラーン」を救うためにマナを別の星に求めにやって来て、その星の人間がそれを乱用して無くなりそうだったので、無駄遣いされないために侵略を行った。これがダオスが行ったことであり、結果として大小さまざまな争いを生んでは多くの人が死んでいったのだから、クレス達を含む側から見れば迷惑千万な事である。
 作中で「ダオスは魔科学に関わっていない人間を襲っていない」という発言もあるが、これは単に人道的な問題ではなく、戦略的に無意味な戦闘を行わなかっただけのことでしかないように思える。関わったら即街ごと滅ぼすなどしているし。

 そして最大の問題点。
 それは、ダオスは人間を操る力がある(ストーリー上でも要所要所で使っている)にも関わらず、魔科学によるマナ枯渇問題を「政治的」に解決しようとしなかったことである。
 早い話が、魔科学を推奨していたミットガルズ王国の要人を何人か操り、予算を止めたり研究を禁止させるなどの措置を取ればよかったのではなかろうか・・・と思うのだ。そうでなくとも、研究の要となる人間を操れば、研究を失敗させたり遅らせたりすることなど簡単である。

 そういった行動を取ろうと思えば出来ただろうに、 「大いなる実り」を早く持ち帰らんとするばかりに焦ったために武力に頼って短期決着することを目指してしまったこと、それによってクレス達が立ち上がる原因を作り、結果討たれてしまったことがダオスの失敗である。
 悲劇を背負った魔王としてはドラクエIVデスピサロや、ライブアライブ魔王オディオなどもいるが、彼らと比べてもダオスにはあまり同情を覚えない。うまくやれば血を流さぬ結末だってありえただけに。

 その思いをより強くしたのが、TOVにおける終盤のエピソードである。

 世界全体が星喰みによって滅亡せんとする状況の中、主人公であるユーリー達は精霊達とともに全ての魔導器の力を終結して星喰みに立ち向かう、というシーンがある。
 TOVにおける魔導器は、序盤の下町のイベントを始めとして作中で何度も示されているとおり、国の生活・経済基盤に関わる重大な技術である。この辺りが、TOPで登場した魔科学とは異なっている(作中の描画を見る限りでは魔科学の研究はまだまだ発展途上であり、使用用途も主に軍事技術に偏っていた)。
 それをユーリー達は武力ではなく政治的な力(これまでの冒険で得た信頼を元にしたコネ)を使い、人々の生活が不便に、場合によっては国そのものが立ち行かなくなる可能性さえあったにもかかわらず、見事に無血で魔導器の全回収に成功しているのだ。
 このときは世界が崩壊するか否かという選択肢が突きつけられていた状態ではあったものの、それでもすべての人々が直ちに納得するとは思えない。むしろ、恐怖や混乱により正常な判断が出来なくなっていた人々も多くいただろう。それでも、彼らは立ち向かって解決したのである。
 コレに比べれば魔科学の放棄などたやすいことに思える。(ダオスの能力を考えればさらに)
 なんでダオスは武力解決に向かってしまったのだろうか、と考えたときふとTOVのラスボスであるデュークの行動と重なってしまった。

 星喰みを退ける手段を得たユーリー達の前に最後に立ちはだかったデュークもまた、人々が魔導器を捨てることなど出来るわけがないと主張し、ユーリー達と対立した。
 デュークがそう思った理由に、かつての人間たちの行動から来る不信があったわけだが、ダオスにもそういった心の闇があったのかもしれない。だから、平和的に解決するということが端から思いつかなかった・・・と考えれば納得がいく。

 TOPで出てくる「この世に悪があるとすればそれは人の心だ」というフレーズ。これ、いろいろ考えてもどうゲームに関係がある言葉だったのか分からなかったのだが、ダオスが取った行動そのものに当てはまっていたのかもしれない。
 

 結論:ダオスはドジっ子。魔王たるもの、武力だけではなく時に政治による解決も試みましょう。


■おまけ

  • ここまで書いておいて、PS3TOVで結末が変わってたりしたらどうしよう・・・
  • 書いてから気がついたけど、ダオスって時間移動能力があるんだから、大いなる実りを持ち帰ることを焦らずとも、ゆっくりやって時間跳躍すればよかったんじゃ・・・。