漫画レビュー「岩泉舞作品集 MY LITTLE PLANET」

 今回の漫画レビューは「岩泉舞作品集 MY LITTLE PLANET」。まさか令和の時代になって岩泉舞の新作が読めるとは…。マジで奇跡を信じたくなる一冊です。

 この漫画は1989年~94年ごろの黄金期のジャンプで、断続的に読み切りを掲載していた「岩泉舞」先生の短編集。最終的に連載には至らなかったものの、この時期のジャンプを読んでいた少年少女たちの心に深く印象を残した作家でした。

 「短編集1」を謳っていた単行本「七つの海」(1992年)以降、いつまで待っても「短編集2」が出ず、「COM COP3 夢見る佳人(七つの海未収録)はもう読めないのか…」と軽く絶望し、そしてそれを忘れるほどに時がたってからまさかの完全版、しかも新作付きで発売されるというまじで奇跡が起きたとしか思えん一冊で、最初話を聞いたときはデマかと疑ったものです。

  • ネットのインタビュー記事によると、「きたがわ翔」氏がツイッターで話題にしたところ軽くバズり、「マンガ図書館」経由で「赤松健」氏が後押しして出版となったようです(その関係で集英社ではなく小学館からの出版)。北川先生、赤松先生ありがとうw

 

 ということで、漫画レビューを。どっちかといえば漫画の内容というよりは本そのものに対する感想ですがw

  • いきなりだが難点として、本単行本が初収録となる「COM COP 夢見る佳人」「KING」「クリスマスプレゼント」の3つの短編は雑誌からのスキャナ原稿のためか無茶苦茶画像が荒いこと。たぶん元原稿が残ってなかったんだろうな…。本当に惜しいがこればかりは仕方ないかな。
  • 良いところは「七つの海」や「COMCOP」のカラーページがちゃんとカラーで載っていること。これは「短編集1」だと白黒だったんですが、ジャンプ掲載当時の色彩豊かなカラー原稿まんまで結構感動した。ここはマジでうれしい。
  • あとは何といっても表題作である新作短編「MY LITTLE PLANET」が読めるところ。岩泉先生の新作がまさか30年経って読めるとは…。絵柄は現代風にアップデートされていますが、キャラクターの目の描き方や、なんともいえない余韻を残す作風が岩泉舞らしさ全開で、嬉しくなりますw 特に最後の「もう一度立とう」という言葉が、まさに一度消えてから立ち上がった岩泉先生を表しているようで痺れます。ぜひ新作もお願いしますw
  • 短編集1の看板タイトルだった「七つの海」は短編としての完成度がマジで高いな。カラーページからの始まり、思春期に突入しつつある少年が初恋の人やイマジナリーフレンドとの別れを経て成長していくという爽やかな終わりが今見るとたまらないものがあります。
  • 少年漫画らしさとしては「COMCOP」シリーズもやはり素晴らしい。主人公コムの、聖剣を武器に悪霊と戦うというジャンプっぽさと、シングルファーザーで子育てを頑張るというジャンプらしからぬ設定で凄い印象に残る作品で、正直これは当時連載されるだろうなと思ってた。逆にこのレベルでも連載にたどり着けなかったというところが同時のジャンプが黄金期だったことを示しているのかも。
  • あと、今回読み返して驚いたのが「COMCOP3」が村山由佳原作なこと。現代だと恋愛小説家として名を馳せる村山先生ですが、まさか漫画原作もやっていたとは。確かにシリーズの中でもこれだけちょっと毛色が違うなと思っていたんですが、なるほど納得。まぁそれ以上に「クリスマスプレゼント」の原作が武論尊だったことに驚きましたがw 

 

 ということでお値段が少々しますが(定価1540円)、その値段以上の価値がある奇跡の一冊。ぜひここからさらなる新作発表に繋がってほしい。