前回からえらく間が空いてしまった本コラム。今回はビデオゲームではなく、アナログなカードゲームを紹介。
■スリードラゴンアンティ/Three-Dragon Ante■ カードゲーム(日本語版:2008/3/29)
開発/販売:Wizards of the Coast(日本語版はホビージャパン発売)
開発元のWizards of the Coast社はトレーディングカードゲームの元祖とも言えるMTG(マジック・ザ・ギャザリング)で有名な会社であるが、その他にも数々のTRPGなどを手がけており、ファンタジー系のTRPGの古参D&D(ダンジョン&ドラゴンズ)の版権元でもあります。
これは、D&D世界の酒場などでギャンブルとして遊ばれているという設定のカードゲームであり、実際に、D&Dのキャンペーンにも組み込めるようになっています(もちろん、単体で遊ぶことも出来ます)。
一RPGの世界観を膨らませるためだけに新たにゲームを作ってしまう辺りがいかにもアメリカらしいといえるますが、そういった経緯からかほとんど宣伝などがなされていないため、かなり面白いにもかかわらず大変マイナーになってしまっているのが非常に惜しいゲームです。
ゲームとしてはこのセット単体で完結しており、一応2〜6人で遊べる、となっていますが実際には3〜4人でプレイするのがやりやすいかと*1。
簡単にルールを説明すると、大体以下のような流れで行われる。
- 各プレイヤーは50ゴールドのチップと6枚の手札を持った状態でゲームを始める。
- 各カードにはそのカードのタイプ(能力に影響する)と強度(1〜13の数字)が描かれている。
- 麻雀で言うところの一局をガンビットと呼ぶ。ガンビット開始前に、各プレイヤーは手札の中から一枚アンティ(賭け札)を選び、場に出す。
- 場に出たアンティのうち一番数値が高い札の分、各プレイヤーは掛け金を支払う。
- 一番高いアンティを出したプレイヤーをリーダーとしてガンビットの第一ラウンドを開始する。
- 一番高い数値のアンティが複数あった場合、次に高いプレイヤーがリーダーとなる(同一強度の相殺ルール)。
- ラウンドのリーダーから場に札を1枚出し、それ以降は時計回りに場に出してゆく。
- プレイヤー全員が場にカードを出し終わったらラウンド終了となる。次のラウンドのリーダーは一番高い数値の札を出したプレイヤーとなる。
- アンティ時に同じく、一番高い数値の札が複数あった場合、次に高いプレイヤーがリーダーとなる(同一強度の相殺ルール)。
- 3ラウンド行い、出した札の強度合計が最も高いプレイヤーがそのガンビットの勝者となり、賭け金を受け取る。
- アンティに残ったカード、場に出したカードを捨て札にし、各プレイヤーはカードを二枚引いて次のラウンドへ。
- 途中でプレイヤーのカードが足りなくなった場合、カードを購入して4枚になるまで山札から引く(購入金額は山札の一番上のカードの強度。このカードは捨て札へ)。山札がなくなったら捨て札を混ぜて使う*2。
- 最終的にプレイヤーの誰かのチップがなくなった時点でゲーム終了となり、その時点で一番手持ちチップの多いプレイヤーの勝利となる。
ゲームの基本的な流れは上記のとおりだが、実際のゲームではコレに加えて「カードの能力」というファクターが加わる。
各カードの能力は主に「特定のプレイヤーからカードを抜く」「特定のプレイヤーにチップを支払わせる」「賭け金を変動させる」「カードを引く」などがあり、ほかにも「特定の数値以下のドラゴンを一枚破壊する」や「一番合計強度の低いプレイヤーが勝つ」といった劇的な効果を持つものまで様々。
これらの能力は「直前のプレイヤーが出した札よりも強度が低い」場合に誘発し、効果を発揮します。
- 各ラウンドのリーダーが出した札の能力は必ず誘発する。どうしても能力を使いたい札がある場合はリーダーを取りに行くのが基本。
そのため、単純にガンビットの勝利を目指してプレイすると必然的に強度が高めの札を出すことになり能力が誘発しにくく、他のプレイヤーの攻撃を浴びやすくなり、能力を使うために低い強度の札を使ってゆくとガンビットに勝利できなくなる、という二律背反に悩まされます。
基本ルールは非常にシンプルながら、このカード能力という要素があるためにかなり戦略性が高く、どのタイミングでどの札を場に出すか、他のプレイヤーが持っているであろう手札を読むことが重要となります(個人的には麻雀よりもはっきりと実力差が出るゲームだと思う)。
1ガンビットは(慣れや運などもあるが)大体30分程度で終わるので、ちょっとした合間にプレイするにも向いています。
これネットゲーム化とか誰かやってくれないかなぁ・・・。本当に面白いのにマイナー過ぎるのが残念。マイナー過ぎてアマゾンでさえ良く品切れを起こすので、RPG専門店(イエローサブマリンとか)に行かないと購入は難しいかも。
■ワンポイント攻略■
- カードの強度(1〜13)の関係上、大体26〜30の間ぐらいが各ガンビットの勝利ライン。アンティを除く手札が28ぐらいになったら勝負のしどころと見てよいだろう。
- このゲームで最も強力なドラゴンといえるのが「レッドドラゴン」であり、こいつが持つ「最大強度のプレイヤーは金貨一枚とカード一枚を支払う」という能力は決まればそのガンビットの勝敗を決めることさえ出来る。まずコイツの能力をうまく使うことを考えよう。
- あくまで最大強度のプレイヤーにしか打てないので、特定プレイヤーを狙い打つ場合は第一ラウンドのリーダーを取るのが得策。
- 上記のレッドドラゴンに並ぶ重要カードが「ゴールドドラゴン」。こいつの「自分の編隊(場に出したカード)の善のドラゴン*3の数だけカードを引く」能力は自分の戦略を大きく広げてくれる。こいつも優先して能力が誘発するようにしたい。
- 同じくカードを引く「シルバードラゴン」は「善のドラゴンが1体以上いるプレイヤーはカードを1枚引く」という能力の関係上、他のプレイヤーの利益にもなるので使いどころが難しい。セオリーとしては第一ラウンドのリーダー時に使う(これだと自分だけカードを引ける)。
- このようなプレイを「自己中シルバー」と呼ぶ*4。
- このゲームは性質上、勝てるガンビットより負けるガンビットのほうが多くなる。そのため、賭け金を盗む「ブラックドラゴン」「ホワイトドラゴン」や、プレイヤーに金貨やカードの支払いを要求する「グリーンドラゴン」「ブラスドラゴン」をうまく使うことで、ガンビットの勝者の価値分を減らす&こちらの負け分を補填することが重要。
- そのため、低強度のドラゴンはかなり使いやすいのだが、逆に中途半端な数値(5〜7あたり)は使い方が難しい。このへんはアンティとして出してしまう、といった割り切りも必要。
- とくに7以下のドラゴンは勝ちに行く際に組み込む場合は「ドラゴンスレイヤー」(強度7以下のドラゴンを破壊する)の対象にならないようにラウンド3で出すのがセオリー。
- 「ドルイド」の持つ「一番合計強度の低いプレイヤーが勝つ」という能力は文字通りゲームの勝敗を左右する力だが、こいつで高く勝とうとした場合「高額のアンティを自分で出す」→「第一ラウンドで低い強度のカードを出す」ということをやると即効でばれる。このようなことをした場合、肝心のドルイド自身の強度が6と中途半端に強いので別のプレイヤーに負ける可能性が高い。基本的にドルイドは奇襲専用と割り切って、ほかのプレイヤーが高いアンティを出した時に降りる振りをして出すべし。
- 基本的には1ラウンド目は全体の様子見。3ラウンド目だとひとつ前のプレイヤーが6を出してくれない場合がありえるので、2ラウンド目に打てる時に使うのがセオリー。
- 日本語版のスリードラゴンアンティのルール解説で一箇所、微妙に間違っている場所がある。カード購入する方法のところで「あるプレイヤーのターン開始時に、手札のカードが1枚の場合、そのプレイヤーは新たにカードを購入しなければならない」とあるが、英語版から察するに「『いずれかの』プレイヤーのターン開始時に、『いずれかのプレイヤーの』手札のカードが1枚の場合、そのプレイヤーは新たにカードを購入しなければならない」の間違いと思われる。
- そのため、誰のプレイヤーのターンでも、手札が1枚になったらカードを購入する必要がある。レッドドラゴンやグリーンドラゴン、ブラスドラゴンといった相手の手札を変動させるカードの能力には気をつけよう。
- 自分達がプレイする際はローカルルールをいくつか採用した。実際のプレイでも、メンバーに合わせてローカルルールを採用するとゲームが面白くなるので、いろいろ試してみると面白いかも。以下はその例。
- その能力ゆえにほとんど場に残らない「カッパードラゴン」を使った単色編隊を組むことに成功した場合、通常の2倍の金貨を支払う「カッパー単色ルール」。
- ガンビットの回数を限定する回数限定ルール。人数で回数を調整すると良いが、4人だと大体5〜6回が目安。
*1:2人だとカードの妨害効果を避けることが出来ず、ほぼ運ゲーになってしまう。逆に5人以上だと山札の消費が激しく、読み合いの要素が薄くなってしまいやはり運ゲーになりやすいので。
*2:逆に言うと山札がなくなるまでは捨て札は補充されないので、カードカウンティングが非常に有効なゲームである。
*3:D&Dではドラゴンは善悪二つの勢力がある。名前に色が含まれるドラゴンが悪で、名前に金属名が含まれるドラゴンが善。
*4:D&D世界でのゲーム用語。他にも金貨を惜しんで守銭奴のようにプレイすることを「ドワーフのようにプレイする」、トップ目のプレイヤーがレッドを連発することを「太ったリーダー」などと言ったりする。