マイナーゲームの集い[第五回:ToysDream(トイズドリーム)] 

前回からちょっと間が空いてしまったマイナーゲーム紹介五回目。今回は個人的イチオシのコイツ。

■ToysDream(トイズドリーム)■ プレイステーション(1998/11/26) 開発/販売:KSS(ケイエスエス)

販売元のKSSと言えば、個人的には無人島物語とかレッスルエンジェルスを作ってたところ、みたいなイメージの会社だが、これはそんなギャルゲーっぽい雰囲気皆無の発明シミュレーションゲームである。

舞台となるのは、戦争の傷跡とそこから工業化により立ち直りつつある、近現代的世界。
(イメージとしては産業革命→自動車時代あたりの雰囲気が漂っている。)
戦災孤児であった主人公達4人は、彼らを育ててくれた教授(故人)が残したとされる借金(あからさまにでっち上げくさい)を返すため、教授に教わった技術を元に発明による何でも屋を開業し、5年以内に借金を返済することが目的。

ガストのアトリエシリーズに良く似た亜種シリーズのひとつであるが、それに見られない本作独特のシステムがこのゲームを特徴的にしている。
まず、主人公達が4人いるが、それぞれに得意な発明分野が存在し、同じ発明でもより早く/多く作成できたり、あるいはそれぞれのキャラにしか作れない個別発明品などがある。
マップはちょうどボードゲームのように点と線で区切られ、目的地を決めて移動すると、ちょうどボードゲームの駒のように各キャラが移動してゆく。始めは徒歩なので一区画一日かかるが、後になると自動車やバイクなどに乗れるようになり、一日に移動できる距離も飛躍的に伸びる。
また、発明できる品が錬金術や魔法によって生み出されるファンタジックな存在ではなく、実際にありそうな素材を組み合わせてゆくところもポイント。

例を挙げると

  • 「鉄くず」を加工して「ネジ」や「鉄板」を作る。
  • 「鉄くず」に「ニッケル」を化合して「ステンレス鋼」を作る。
  • 「生ゴム」から「タイヤ」、「鉄パイプ」から「ハンドル」、「油圧ポンプ」と「ワイヤー」で「ブレーキディスク」

などなど。仮に車一台を作り上げるとしたらすさまじい手間がかかる。

  • 「ノーマルカー」の場合、以下のようなアイテム開発が必要となる。
    • 「ノーマルカー」作成には「シャーシ」x1「ガソリンエンジン」x1「鋼鉄のボディ」x1「皮」x1が必要。
      • 「シャーシ」作成には「タイヤ」x4「ステアリング」x1「ブレーキディスク」x1「クランク」x2「歯車」x4
      • ガソリンエンジン」作成には「ステンレス鋼」x2「シリンダ」x1「点火プラグ」x1「クランク」x1「歯車」x4「ピストン」x1
      • 「鋼鉄のボディ」作成には「鋼鉄版」x4
      • むろん、それぞれの発明品を作るための素材もまた発明しなくてはならない。車クラスともなれば4人で効率よく作成しないとかなり時間がかかってしまうことになる。

そんなきわめてリアリティ溢れる発明品が、400以上という膨大な物量であり、しかも一度のクリアでは作成できないアイテムもあり、やりこみ度はかなり高い。
イベントもかなり豊富で、町の人のちょっとした日用品から国家事業規模のものまで様々な依頼が主人公達に次々に飛び込んできます。

特に依頼「俺の武器」に登場する刑事(武器を作ってくれと「モップ」と「柱時計」を頼んでくる)とか、「点滅反応人形」がどう見ても某「せっかくだから」で有名なあのキャラだとか(ゲーム中でも「せっかくだから」とか言われる)、主人公達に味方してくれる新聞社の偉い人、通称「風雲児」がどうみても飯野○治だとか、プレステのゲームなのにセガサターン臭ばりばりのイベントがあったりで、分かっていると笑えます。

借金返済が目的ですが、難易度はそんなに高くなく(なれれば2年かからず目標額をクリアできる)、読み込みの速さやテンポの良さ、カントリー調の雰囲気にぴったりなBGMと、かなりの良作ゲームといっていいでしょう。

このゲームの欠点として、まずエンディング条件の分岐の仕方がおかしいこと。
エンディングは、主人公それぞれの個別エンド、もしくは個別条件を満たさなかった場合のノーマルエンド(でもこれが一番ハッピーエンドっぽかった)、そして借金を5年以内に返せなかった場合のバッドエンドがある。
問題なのはこの個別エンドを出す方法で、まず主人公のひとり「マックス」の個別エンド条件イベントが発生し、これに成功するとマックスルートエンドが確定する。
で、これに失敗したとき、次の「ミオ」個別エンド条件イベントが発生→成功した場合はミオルート確定で、失敗した場合・・・と、特定のキャラのエンドを見るためには、イベントを狙って失敗させる必要がある。
正直、始めのうちはこの分岐条件が分からず、後に攻略本を読んで初めて分かったときは脱力してしまった。なんでわざわざ、イベントを失敗させる必要があったのだろう。

続いて、キャラクターのグラフィックに使い回しが多い事。特に湖畔の小屋に住む謎の男「ジム」など、ゲームの裏設定に関わるであろうキャラなのに、なぜかグラフィックは汎用キャラのソレなのである。それでいながら、ほとんどイベントが無い「建設業の女性」などには個別グラフィックがあったりして基準が分からない。*1

そして、最大の問題点。
このゲームは発明したり、あらたなマップルートを発見するごとに、セーブデータにその発明率、ルート発見率がパーセント表記で記録される。記録されるのだが、肝心の発明率はゲーム中どうやっても100%にならないのである。(おそらく没アイテムや、発明できないアイテムなどもカウントしてしまっているのだろう)
それでいてルート発見率は逆に、すべてのルートを発見するとなぜか100%を超えてしまう。(こちらは逆に隠しルートをカウントし間違えていたと思われる)
繰り返しプレイの果てにたどり着くこのミスはかなり痛い。玉に致命傷である。プレイの際には気をつけたほうがいいだろう。

そんな問題点はあるにせよ、発明系ゲームの中では(個人的に)最高峰のこのゲーム。現在、中古価格もそれほど高くないし(大体3000前後で売られている)、ぜひやっていただきたい一品。
これ、ゲームアーカイブで出ないかなぁ。

▲ワンポイント攻略▲

  • ゲームは5年以内に借金を返すことが目的だが、なれれば2年かからず返済が可能。いつでも返せるわけではなく、依頼を受けて名声が上がる(成功、失敗に関わらず上がる)と、決められた額の借金返済要求が来る->返すの繰り返しとなるので、依頼は積極的に受けること。
    • 依頼を受けた後、依頼の品を作るのに必要な材料やアイディアを受け取れる場合がある。材料が無くても気にせず受けたほうが得。
    • また、借金を返済するごとに移動できる範囲が広がる。ゆえに借金も積極的に返してゆくこと。
  • 「壊れた〜〜」や「〜〜のアイディア」というアイテムを素材として受け取った場合、その素材を材料に設計図などを作る場合、最低2枚作ること。そうすると依頼の品を納入しても、自分達が使うor売るように一つ余分に作ることが出来るため。
    • 特に序盤の「壊れた紡績機」は確実に設計図を2個作っておきたい。「紡績機」は発明用の設備として使えるが、ここで手に入れないと入手がかなり後になってしまう。
  • 借金返済には依頼の謝礼だけでは到底足りないので発明品を売ってゆくことになるが、気をつけるべきは発明品は売れば売るほど売値が下がってしまう(記憶が定かではないが、たしか16個だか売るごとに値段が下がっていったと思う)。そのため、売るときはちょっとずつではなく、なるべくいっぺんに大量に売るのが賢いやり方。
    • オススメは「クォーツ時計」。重量が軽いので大量に持ち運べ、しかも売値が高い。実際、これだけで借金返済額分稼ぐことさえ可能。
  • エンディングの各キャラごとの条件は以下の通り。
    • 主人公の一人[マックス]の個別エンド条件となっているイベント「秘密兵器」で、ターボエンジンの調達に成功するとマックスルート確定。失敗した場合、ミオルートの個別イベントが発生(下の奴)。
    • 主人公の一人[ミオ]の個別エンド条件となっているイベント「幻のワイン」で、ザビ・デ・レキンの調達に成功するとミオルート確定。失敗した場合、ベレッタルートの個別イベントが発生。依頼を受けない場合、ピートルートの個別イベントが発生。
    • 主人公の一人[ベレッタ]の個別エンド条件となっているイベント「時限式強力爆薬の依頼」で、時限式強力爆薬×4の調達に成功するとミオルート確定。
    • 主人公の一人[ピート]の個別エンド条件となっているイベント「フィリップの遺作」でフィリップの遺作の調達に成功するとピートルート確定。
    • 上記のどれもが失敗、あるいは条件を満たす前に借金を返済し終わった場合、ノーマルルートエンドとなる。

*1:多分、途中でイベントが没になったのだろう。このゲームは結構そういう痕跡が残っている